スペーサ

磁性流体のアートプロジェクト「突き出す、流れる」は、アーティストの児玉幸子が、2000年に開始したメディアアートのプロジェクトです。

磁性流体とは、磁性体の微粒子を水溶性あるいは油性の溶液の中に拡散させ、液体の状態でも強磁性を保つようにした黒色の液体。砂鉄よりも自由に変形され、複雑で有機的な3次元形状があらわれます。

作品「突き出す、流れる」(児玉幸子、竹野美奈子、2001年)では、磁性流体の3次元的形状が、展示空間の観客の声など音声の大きさに反応してダイナミックに変化すると同時に、その映像を巨大なスクリーンに映し出し、それは時に鋭い山形や、滑らかな有機的な形状、銀河のような粒の流動を見せます。2001年のSIGGRAPH Art Galleryでたいへん話題となり、2002年の文化庁メディア芸術祭インタラクティブ部門では、大賞を受賞しました。

2004年に発表した「呼吸するカオス」、その後の「モルフォタワー」シリーズで児玉は、自ら”磁性流体彫刻”と名づけた世界初の新しいテクニックを使って、磁性体の立体である金属表面に、磁力により磁性流体のスパイク(棘)を脈動させ、テクスチャが生きているように変化するキネティックスカルプチャーを創作します。
音楽、光と、磁性流体の動きを、滑らかに繊細にコントロールした「モルフォタワー/二つの立てる渦」では、Sonyの宮島靖の高度な技法を組み込み、磁性流体を渦巻きひとつの風景に見立てた、スペクタクルなインスタレーションを発表しました。

食卓の皿の中に黒い棘が出現する「脈動する」、電磁石の水平・垂直の構成「均衡点」、磁性流体を小さな“海胆(ウニ)”と見立て、数匹が池を走り回る「波と海胆」、黒い海に立ちすくむ人型の彫刻「パルサー」、レイナ・ソフィア美術館でのコミッションワーク「突き出す、流れる2008」など、プロジェクトで発表された数多くの作品は、太平洋を身近に生まれ育った児玉幸子の自然と人間に対する思いが反映されています。インスタレーション、キネティックスカルプチャー、写真、映像など、多彩なメディアへと展開しつつ、これまでに17か国以上の国々で展示されています。

■最近の活動は、新サイトに紹介します。(2013年6月)